唯一無二って何? MOMOKO SUZUKI Solo Exhibition
あなたはあなた
わたしはわたし
唯一無二だからこそ、美しく価値がある
宇宙の壮大な生命のサイクルの一環として、現れては消え永遠に変化し成長をし続けるーー鈴木の鉛筆による緻密なドローイングプロジェクトは、唯一無二と無限の可能性をテーマに、終わりが創造の始まりを指し示すかのように成長と消失を繰り返します。本展示会では神宮前会場にてWall Drawingの新作を発表、広尾会場では国内初のパネルの作品群を発表します。永遠に未完の作品群、姿を変えていく過程をお楽しみ下さい。
”もつれあう生成と消滅。
襞のなかの襞のなかの襞。
この宇宙に生きる不思議。
鈴木桃子の作品と初めて出会ったあの夜以来、
私は彼女の世界を忘れることができない。
ーー’桃子讃’、 芹沢高志(P3 art and environment 統括ディレクター)”
※神宮前会場の展示が2022年12月までご覧いただけることとなりました。観覧ご希望の方は作家またはアートルーム企画室ホームページ、コンタクトにご連絡ください。
アーティスト
鈴木 桃子
1982年、神奈川出身。2009年英国セントラル・セイントマーチンズ大学(BA)卒業後、英トップコレクターZabludwiczs Collectionによるプライズ展にファイナリストとして選抜、英国を中心に活動を始める。『さいたまトリエンナーレ』[2016]に招聘作家として参加。ドローイングを総合芸術として解釈し直し、時間と空間のアートとして展開。かたちの無い宇宙=唯一無二と無限の可能性をテーマに、生と死、愛と狂気を表現。
思考の構造体としての役割価値を自身のドローイングに見出し、IT業界をリードする大手外資系企業独立後、人と人、人間性とテクノロジーを繋げる架け橋として自身のアートを再考中。
インスタグラム:http://instagram.com/momokosuzuki_art
ウェブサイト:http://www.momokosuzuki.co.uk/
会場・会期
広尾会場
2022年7月16日(土)‒7月31日(日)(月・火曜日休)
水〜金:13:00-19:00/土日:10:00‒19:00
アートルーム企画室東京都渋谷区広尾2-13-6 ARK1001
東京メトロ 広尾駅より徒歩8分/恵比寿駅より徒歩12分
都営バス 都06系統 広尾一丁目バス停より徒歩1分
神宮前会場
2022年8月1日(月)‒12月31日(日)
※神宮前会場の展示期間が2022年12月末まで延長されました。観覧時間は原則として土日または平日夜となります(完全予約制)。観覧ご希望の方は作家またはアートルーム企画室ホームページ、コンタクトよりご連絡ください。
東京都渋谷区神宮前4-23-2 原宿テラス101
関連イベント
・ツアー(要予約)
概要:神宮前会場(前半)、広尾会場(後半)にてアーティストが作品を解説
日程:2022年7月16日(土)15:00-16:00, 16:30-17:00
※各回少人数予定、申込多数の場合抽選or別時間・日程枠をご案内させていただく旨ご了承ください。
集合:神宮前会場(下記アドレス)に5分前に集合
〒150-0001 東京都渋谷区神宮前4丁目23−2
※申込者多数により締め切りました。
・アーティストトーク
日程:2022年7月16日(土)17:15〜 ※時間変更しております
会場:アートルーム企画室
※申込者多数により締め切りました。
•オープニングパーティー
日程:2022年7月16日(土)18:00〜
会場:アートルーム企画室
※予約不要です。
関連イベント参加ご希望の方は、希望日時、参加人数等をアートルーム企画室ホームページ、
コンタクト(https://kikaku-shitsu.jp/company/#contact)よりご連絡ください。
作家ステートメント(Proposal)
ノータイトルド・ドローイング・プロジェクト
“All of philosophy has no other goal: it is a matter of giving a frock coat to what is, a mathematical frock coat. On the other hand, affirming that the universe resembles nothing and is only formless amounts to saying that the universe is something like a spider or spit (Georges Bataille)”.
あらゆるものが形のない宇宙のようであるように、ノータイトルド・ドローイング・プロジェクトは建築物の一部に現れては、何もない空間に帰るように姿を消してゆきます。
このドローイング・プロジェクトは「かたちのない宇宙」をテーマに永遠に成長し続け、一つのイメージから別のイメージへ、空間から空間へ、媒体から媒体へトランスフォームし続けます。制作プロセスの全貌を公開するとともに、最終的にイメージは通常観客の前で消えていくか建物が崩壊するまで変化し続け、同時に別の空間に現れ続けます。イメージは消失するのではなく、姿を変え、万物の歴史・経験の一部として永久にその空間に存在し続け、エントロピーの過程を刻々と刻み続けます。
このことは宇宙の壮大な生命の生と死のサイクルを表し、その万物の無限の可能性について「かたちのない宇宙」と呼んでいます。
そして、プロジェクト全体を通し唯一無二の価値とその意味について表現しています。
時間が存在する限り、あらゆる物質は永遠ではありません。終わりが創造の始まりであるように、生命がやがて終わるという事実を喪失ではなく、壮大な宇宙の生命のサイクルの一部として、絶え間なく変化する時間の中で流転しなってゆく[Becoming]という事を肯定することからこのプロジェクトは始まります。永久に未完であると同時に、描かれるイメージだけではなく、変化していく時間と空間、そこに存在する全ての命とその生と死、愛、果てしない歓喜、深い絶望、官能の間で揺れ動く人生そのものを作品とします。そして、変化し続けるイメージは形を脱ぎ捨て限りなく広がる可能性を体現します。
拡がり続けるイメージの渦の中に観客を招待し、一切の先入観と前提条件を捨て、その空間の一部になる事により、自身に向き合い永遠の命題である自分自身は誰なのか、どこへ向かい何を渇望するのかという問いに対する答えを探すための時間と空間を媒体のない映画、あるいは『オーケストラ』として体現します。
ノー・タイトルド・ドローイング・プロジェクト:背景について
ノー・タイトルド・ドローイングプロジェクトは、多様化する宗教、文化、言語、肌の色やジェンダーを持つ環境でのアーティスト生活において、戦争被験者のエピソードや被戦地で未だに残る物理的・精神的爪痕、現代社会における差別の実態、宗教問題やジェンダーを巡る犯罪や問題等を抱え懸命に生きる人々との出会いと会話を通じ、アーティストとしての一つの平和への強い願いと希望、そして彼らとの個人的な約束をきっかけに構想しました。あらゆる偏見・差別・争いの大きな要因は、先入観・無知・嫉妬であると考えます。一切の先入観と前提条件を捨て、様々なバックグラウンドを持つ人々と同じ舞台に立つ事からこのプロジェクトは始まり、作品を通しコミュニケーションをとる事で自己と他者を見つめ、そこで生まれたポジティブな精神が各々の希望となればと願い制作を継続しています。
元々映像/メディア作家である自身が本プロジェクトの構想にあたり、観客と造り手の間にある一切の媒体を取り去り、観客が主役の映画を現実の空間に実現したいというアイディアが発端となりました。総合芸術である映画というものが人間の人生を表し、そのフレームと物語に集約される全ての要素が必然であるように、このプロジェクトは完成した作品そのものではなく、全ての制作プロセスに関与する要素が作品であり、そこに存在する人々は一つの無限に広がる小さな宇宙の集合体という概念が作品の基礎となります。そして、緻密なドローイングのイメージは、視点を変える事で多様な見え方を観客に与えます。
ドローイングは最もシンプルな表現手段であり、生まれてから一番初めに何かを手で創造するために用いる手段です。故に根源的であり、自由であり、無いということが全てを内包する事が可能であるように、シンプルであるからこそあらゆる要素と可能性を内包する事が可能です。ドローイングは、ツールを握る全ての人々に自由な発想と限りのない可能性をもたらします。その最もシンプルな表現と、何百年と色褪せる事のない鉛筆、白と黒の線で唯一無二の存在の美しさと価値を表現しています。
ダイバーシティーとデジタルトランスフォーメーションをスローガンに2015年から2019年の間、外資系大手IT・テクノロジー企業に所属し、アートとテクノロジーに人間性を通じ橋を架ける事を考察して来ました。不確実な現代社会において、生きる事への本質的な問い—自分とは誰であるのか、何処へ向かい、何を人生に求めるのかという、人々が長い間問い続けてきた命題に多くの人々が直面していると考えています。今、この瞬間に生きていく上で必要な全てのものが自分自身の中にあり、その無限の可能性に気が付いた瞬間、自分自身が誰であるのか、という答えの一端を知ることが可能なのではないかと考えています。始まりが終わりを約束しているように、長い時間かけられて創作された緻密なドローイングプロジェクトは最終的に消えていきます。何かを脱ぎ捨る事でもっと大きな可能性を得る—自分自身を信じ、在り方を肯定して前に進む事で道が開ける—このドローイングプロジェクトは「唯一無二について」というテーマと同時に、先入観を捨てた先の自由と無限の可能性を体現しています。