ハローサンリクー東日本大震災から10年「ひかりの実」特別プログラムー(1)

守屋慎一郎

2011年3月11日、14時46分、私は品川駅にいました。3泊4日だったか。当時従事していた「平城遷都1300年祭」の仕事で奈良から戻るところ、新幹線を降りてすぐに強烈な揺れを体験しました。あと1本遅かったら新幹線内に長時間閉じ込められたところでした。避難を受けいれてくれた品川プリンスホテルのロビーで待機しつつ、午前3時すぎに会社に戻って、はじめて津波の映像や火災の映像を見て、、、それから何日間も、何も考えることができず、ひたすらネット画像を見続けていたことを思い出します。

煙をあげる原発の映像を見ながら、私たちに、アートに、なにか出来ることがあるのか。自問自答し続けました。良いアイデアとも思いませんでしたが、何もしないよりはましかと思い、スパイラルで「アートのちから」という企画を実施することにしました。普段付き合いのあるアーティストのみなさまにお声を掛け、オークションで販売して良い作品を募集し、販売しました。細かい数字は忘れてしまいましたが、おそらく30日程度の会期で300万円程度の売り上げがあり、それを被災地(支援団体)に送ることができました。同時期に表参道ヒルズで実施されたアイドルの握手会では1日で3000万円が集まったと聞き、アートとエンターテイメントの影響力の差を実感しましたし、自己満足の域を出れてないことは自覚していますが、それでもなにもやらないよりは良かったのではないかと、いまでもそう思っています。

同時期、もうひとつの悩みがありました。横浜。象の鼻テラスで計画していた「光の祭典」の開催可否です。象の鼻テラスとは、スパイラルが運営する横浜市の創造界隈拠点で、2009年の開館当初より、単に館内にアート作品を展示するのではなく、横浜というまちに機能する、まちを変化させるアートプロジェクトの実現を目指していました。そして横浜というまちに機能するアートとして「光」に着目し、社会実験とその成果発表を進めるとともに、2011年の秋に横浜版の「光の祭典」を実現することを計画していました。しかし震災が起こり、原発事故があり、記憶にある方も多いと思いますが。首都圏では計画停電が実施されました。街灯や店舗サインが消灯され、みんなが節電に取り組むなか、よりによって「光」の「祭典」をやる。当時の世相を考えると到底無理だと思いましたし、私のなかでもどうしてもやりたいという気持ちはありませんでした。

しかし私の先輩である松田朋春さんが生み出した「スマートイルミネーション」という言葉(コンセプト)により大きな転機が訪れました。当時、震災と原発事故の影響もあり、街灯のLED化など、都市の省エネに関心が集まっていました。それであれば省エネ技術とアートを融合し、新しい夜景を提案するイベントを組成すれば良いのではないか。松田さんの発想はいま思っても画期的だったと思います。これこそがプランナーの仕事だと思います。コンセプトが決まればあとは早い。私はこのコンセプトを実現するために奔走し、2011年10月、初回の「スマートイルミネーション横浜」を開催しました。そしてそのとき、大きな目玉となったのが「ひかりの実」という髙橋匡太さんの作品です。(続く)