2021年1月1日、合同会社企画室を設立しました。合同会社企画室は専門的な企画のノウハウを提供するコンサルテーション会社であるとと同時に、社会に対して新たな価値を提案する「企画人」のプラットフォームとなることを目指しています。
そもそも「企画」とは何でしょうか。プロシェッショナルとしての企画業。
通常「企画」とは、これまでにない新たな事業を提案もしくは計画することを意味しています。もちろん提案する事業の新規性やオリジナリティは「企画」の重要な要素です。しかし専門職として「企画」に取り組むのであれば、それだけでは不十分です。なぜその事業を推進する必要があるのか。期待される効果は何か。提案の背景や目的を客観的事実から整理し、事業コンセプトの説得力を強化する。さらには具体の事業内容とともに、それを実現するために必要となる体制や工程、予算などを整合的に計画する。いわば「企画」とは、「事業」という構造物を「設計」する行為なのであり、専門的職能としての「企画」とは、新規性の高い事業コンセプトを立案することと同時に、事業の全体像を明瞭な設計図(共有可能な言語体系)に落とし込む能力を意味しています。
私が合同会社企画室を設立した第一の理由は、こうした専門的な「企画」のノウハウを、広く社会にご活用いただくことにあります。
私は、コーポレート・アイデンティティ(企業理念、社名、シンボルマークなどの開発)から出発し、さまざまな領域の「企画」業務に携わってきました(詳細は「代表プロフィール」をご参照ください)。特に博覧会等の大型イベントや文化施設の計画運営など、関係者の合意形成と協働が重要となる公的プロジェクトを多く経験していることは自分の大きな強みだと思っており、合同会社企画室ではその経験を生かし、企業や自治体の皆様が必要とされる「企画」業務を積極的に支援してまいります。プランナー、プロデューサーとしてのプロジェクト参画はもちろんのこと、プロジェクトの初期段階で必要となる各種調査、コンセプト開発、事業計画書の作成、コンペ資料・プレゼンテーション資料の作成などに対応いたします。また必要に応じて、建築家やデザイナー、キュレーター、プロジェクトマネージャーなど、多分野の専門家をネットワークをし、プロジェクト推進に最適なチームアップをお手伝いします。
オリジナルワークとしての企画業。企画人のプラットフォームを目指して。
そしてもうひとつ。「企画人」のプラットフォームについてです。
私は2010年にスパイラル/株式会社ワコールアートセンターに転職し、主に地方自治体や不動産ディベロッパーからの依頼を受け、アートフェスティバルやパブリックアートの制作を担務してきました。そもそもスパイラルに転職したのは「アート」に強い関心があったからで、大学時代には一人のアートファンとしてスパイラルに通っていましたし、大きな憧れをいただいていました。なので自分の企画のノウハウとアーティストのクリエイティビティが噛み合い、スパイラルの名義で多様かつ大規模なアートプロジェクトを企画、プロデュースできていることには大きな満足感を覚えています(スパイラルのチーフプランナー 職は今後も継続する予定です)。
そして同時に、アーティストとともに仕事をするうちに実感したことがあります。それはアートの仕事の本質とは何かという問題です。
アーティストとは自らの課題意識から「作品」を発想し、制作し、世に問う人たちです。たとえクライアントワークであったとしても「作品」はあくまでもアーティストの著作物なのであり、アーティストは「作品」に関する全ての責任を負っています。だからこそ「アート」の仕事ではアーティストの主体性と自律性を守ることがもっとも大切なのであり、この主体性、自律性こそが「アート」という行為の本質なのだと思います。
そしていま、必ずしもアプトブットが「作品」ではないとしても、まさにアーティストのように、自らの課題意識に基づき、自ら責任で、自ら行動する人が現われはじめています。社会課題の解決や社会貢献を目的とするソーシャルプロジェクトの分野で特にその傾向は顕著で、自律的かつコンパクトなプロジェクトが社会全体に大きな影響を与えはじめています。新型コロナ感染症の拡大により既存の価値観、既存のシステムの限界が露呈しつつあるなか、こうした自律型のプロジェクトがますます重要な意味を持つのではないかと考えております。
こうした考えから、合同会社企画室においても、企画の経験、専門性を活かした「クライアントワーク」だけで満足することなく、私自身が事業主体となる事業、「オリジナルワーク」にも取り組むこととしました。
具体の活動は順次発表していきますが、まずは自律型のプロジェクトを展開している人たち(もしくは展開しようとしている人たち)を新たな時代を拓く企画者=「企画人」と位置付け、特に私自身が強い関心を持ち続けている「アート」と「まちづくり」の分野を中心に、多分野の「企画人」を結ぶプラットフォームを形成したいと考えております。当面は「企画人」たちのゆるやかなネットワークを形成することを目的に、オンラインのトークイベントを継続的に開催するつもりです。
そしてなるべく早い将来に、小規模なギャラリー兼スタジオを持ち、展覧会やワークショップ、オフラインのトークイベントやサロンを頻繁に実践することで、「企画人」が集う場所、常に面白いことが起きる場所、真に社会に必要とされていることが発案され、実践されている創造的拠点としての「企画室」を形成し、運営していきたいと考えております。
足をまっすぐ伸ばして遠くを望む。
そもそそも「企画」の「企」という文字は、「横から見た人」と「立ち止まる足」の象形を組み合わせた合意文字で、「人が足をまっすぐ伸ばして遠くを望む」(出典:OK辞典:漢字/漢和/語源辞典)という意味を持つそうです。「足をまっすぐ伸ばし遠くを望む」。それはまさに、コロナ禍によって大きく変わろうとしている時代に必要な態度だと感じます。そして「企画」という行為の本質を示しているようにも思います。
面白いことをやりましょう。愉快なことをやりましょう。
地に足をつけながら。遠くを見つめながら。
企画室は挑戦を続けます。そして、ともに挑戦してくれる仲間を求めています。
合同会社企画室の活動にぜひご期待ください。